サプライチェーンリスクとは?中小企業のセキュリティ対策や具体例を解説

近年、ニュースなどでサプライチェーンという言葉を目にする機会が増えてきているのではないでしょうか。
このサプライチェーンというのは、一連のビジネスの流れを表しており、予算や人員に限りのある中小企業に深刻な影響を与えます。
近年では経済産業省や内閣サイバーセキュリティセンター、警察庁、防衛省なども、サプライチェーンリスクの強化を強く呼びかけています。
経済産業省:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針
本記事では、サプライチェーンリスクの意味や実際に起きた事例をまとめました。
さらに、中小企業でも実践できる具体的なセキュリティ対策についても解説します。
- 取引先からセキュリティ対策を強化してくださいと言われている方
- サイバー攻撃や情報漏えいに不安を感じている方
- 中小企業でも実践できる現実的な対策を知りたい方
サプライチェーンとは?

まずは、「サプライチェーン」という言葉の意味から見ていきましょう。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、製品やサービスが企画・開発され、顧客に届くまでの一連の流れを指します。
具体的には、以下のような工程が含まれます。
- 原材料の調達
- 工場での製造・加工
- 倉庫に運ぶまでの物流
- 販売店での販売
- 導入後のサポート
- 保守運用
サプライチェーンの現状
近年は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やクラウドサービスの普及により、企業同士がインターネットを介してデータを連携する機会が増えています。
業務効率化が進む一方で、サプライチェーンを構成する企業の中には、セキュリティ対策が不十分な企業があるのが現状です。
サイバー犯罪者はそういったサプライチェーンリスクを狙って、セキュリティ攻撃を仕掛けてきています。
サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃
近年、特に猛威を振るっているのがサプライチェーン攻撃と呼ばれる手法です。
これは、サプライチェーンリスクへの対策が甘い企業を狙って、重要システムや大企業へのデータに侵入していく手法を指します。
例えば、
- 取引先のネットワークを経由してマルウェアを感染させる
- 業務で使用するソフトウェアへの侵入
- ID・パスワードの乗っ取り
といった手口があります。
特に中小企業は、セキュリティ対策が不十分であるとして、攻撃の入り口として狙われるケースが多いです。
警察庁の公表では、ランサムウェア被害件数は前年比37%増加しており、そのうち多くを中小企業が占めていることが報告されています。
また、令和7年上半期の資料でも、VPN機器やリモートデスクトップなどの脆弱性を悪用した侵入被害が継続して確認されており、企業規模を問わず対策の重要性が高まっています。
自社は規模が小さいから狙われないと考えるのではなく、対策が甘い企業ほど狙われやすいという前提で、日頃からセキュリティ対策を見直すことが重要です。
経済産業省もサプライチェーンリスクへの対策を支援
こうした状況を受け、経済産業省や警察庁なども、サプライチェーンへのセキュリティ対策強化を推進しています。
- ガイドラインの整備
- 中小企業向け支援制度の導入
- セキュリティ評価制度の導入
対策すべきサプライチェーンリスク

企業が備えるべきサプライチェーンリスクには、主に4種類あります。
各リスクに応じた対策を行うことが大切です。
①物理的リスク
自然災害や予期せぬ事故によって、サプライチェーンが物理的に寸断されるリスクも見逃せません。
例えば、
- 地震
- 台風
- 火災
- 停電
などによって、製造ラインが停止するリスクです。
自社の物流に影響が及ぶ場合があるため、物理的な対策も講じておく必要があります。
②人的リスク
従業員によるミスや内部不正も、重大なリスクにつながります。
- メール誤送信
- パスワード管理不備
- USBメモリ紛失
- 顧客情報の持ち出し
どれだけ高度なシステムを導入していても、人間による不注意でサプライチェーン全体への影響がでることを念頭に入れておくのはとても大切です。
③経営・信用リスク
取引先の経営悪化や倒産もリスクのひとつです。
特に、自社に必要な部品などを特定の1社に依存していると、その取引先が倒産した瞬間に自社の事業継続に大きな影響を及ぼしてしまいます。
そのため、調達先を複数確保するほか、定期的な与信管理を行い、取引先の経営状況を把握しておくことが重要です。
④サイバーリスク
サプライチェーンリスクの中で最も警戒する必要があるのが、サイバーリスクです。
代表的な例としては、
- 不正アクセス
- 情報漏えい
- メール攻撃
などがあります。
サプライチェーン上の企業がサイバー攻撃を受けると、システム停止や情報漏えいにつながる可能性があります。
例えば、部品の発注システムが利用できなくなったり、生産ラインが停止したりするなど、企業活動全体へ影響が及ぶ大きなリスクです。
サプライチェーンリスクの被害事例

ここからは、過去に発生したサプライチェーンリスクの事例を3つ紹介します。
事例1:委託先のアカウントを利用した不正アクセス
LINEヤフー株式会社で、業務を委託していた取引先のアカウント情報が不正利用されました。

攻撃者はその後、不正利用したアカウントを経由して企業のネットワークへ侵入し、情報漏えいを引き起こしました。
原因は、委託先企業のセキュリティ対策不足や、脆弱なパスワード管理だったとされています。
事例2:ソフトウェア更新を悪用したマルウェア感染
多くの企業が日常的に利用している、ソフトウェアの更新プログラムが改ざんされ、マルウェアが侵入されたケースです。

企業側は正規のアップデートだと判断しインストールしたため、大きな被害につながりました。
正規ソフトを悪用した攻撃だったため、被害に気づきにくかったことが特徴です。
事例3:自然災害による供給停止
自然災害によってサプライチェーンが停止したケースです。
この事例では、台風が直撃したことで、重要部品を製造していた工場が冠水し、長期の操業停止に追い込まれました。
その結果、部品供給を受けていた企業では代替調達が間に合わず、生産ライン全体が停止する事態となりました。
この事例は、特定企業への依存リスクを浮き彫りにしたケースとして知られています。
サプライチェーンリスクの具体的な対策

サイバーリスクへの対策
サイバーリスクを防ぐためには、ネットワーク全体のセキュリティ強化が欠かせません。
特に近年は、中小企業を経由して大企業へ侵入する「サプライチェーン攻撃」が増えており、最低限のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないケースも増えています。
オフィス設備のセキュリティ対策を行う
物理的なセキュリティ対策として、
- 入退室管理システムの導入
- 防犯カメラ設置
- サーバールームの施錠管理
などが挙げられます。
ソフトウェア対策を行う
マルウェア感染や情報漏えいを防ぐためには、ソフトウェア面での対策も欠かせません。
具体的には、
- ウイルス対策ソフトの導入
- OS・ソフトウェアの更新
- 不審メール対策
などが代表的です。
ネットワーク対策を行う
近年増加しているサイバー攻撃へ対応するためには、ネットワーク全体の強化も必要です。
例えば、
- UTM
- ファイアウォール
- VPN環境
特にUTMは、
- ウイルス対策
- 不正アクセス対策
- 迷惑メール対策
- Webフィルタリング
などを一括管理できるため、中小企業でも導入が進んでいます。
ただし、UTMなどのセキュリティ機器は高額になる場合もあるため、リース契約を活用する企業も増えています。
【月額料金シミュレーション】
例えば、総額100万円の最新UTM・セキュリティ設備一式(設置・初期設定費含む)を導入する場合
7年リース〜:月額約14,000円
物理的リスクへの対策
自然災害や事故による供給停止に備えるためには、事前準備が重要です。
BCP(事業継続計画)を策定する
災害発生時でも事業を継続できるよう、BCP(事業継続計画)を整備しておきましょう。
例えば、
- 緊急連絡体制
- 代替拠点
- 復旧手順
などを事前に整理しておくことで、被害を最小限に抑えやすくなります。
調達先を分散する
特定企業への依存度が高い場合、災害時に供給停止リスクが高まります。
そのため、
- 仕入先を複数確保する
- 地域を分散する
などの対策も重要です。
データをバックアップする
災害や障害に備え、重要データは定期的にバックアップを取得しておきましょう。
経営・信用リスクへの対策
取引先の経営悪化や倒産リスクに備えるためには、定期的な管理が必要です。
与信管理を徹底する
取引先の財務状況や経営状態を定期的に確認することで、リスクを早期に把握しやすくなります。
必要に応じて、
- 信用調査
- 財務確認
- 調達先分散
なども行うとよいでしょう。
契約内容を見直す
万が一トラブルが発生した場合に備え、契約書上で責任範囲を整理しておくことも重要です。
例えば、
- 情報管理義務
- 報告義務
- 損害賠償範囲
などを明確にしておくことで、トラブル発生時の対応をスムーズに行いやすくなります。
人的リスクへの対策
人的ミスや内部不正を防ぐためには、社内ルール整備も重要です。
アクセス権限を管理する
必要以上のアクセス権限を付与すると、情報漏えいや内部不正のリスクが高まります。
そのため、
- 管理権限の制限
- 退職者アカウント削除
- 閲覧範囲の制限
などを定期的に見直しましょう。
社内ルールを整備する
人的リスクを減らすためには、日常的なルール整備も重要です。
例えば、
- USBメモリ利用ルール
- パスワード管理ルール
- 顧客情報の持ち出し制限
などを明確にし、継続的に運用していくことが大切です。
まとめ:サプライチェーンリスクへの早急な対策が重要

サプライチェーンリスクは、経済産業省や警察庁なども警鐘を鳴らしている、企業に関わる重要なリスクです。
特に近年はセキュリティに関するリスクが高まっています。
まずは、
- 自社のセキュリティを把握する
- セキュリティ研修を行う
- ネットワーク機器を導入する
など、できることから進めていきましょう。

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