中小企業はサイバー攻撃を受けやすい?現状の事例とおすすめの対策方法

中小企業はサイバー攻撃の主要な標的となりつつあります。
本記事では、実際の被害事例から、中小企業が狙われる理由、攻撃手口、そして今すぐ取るべき具体的な対策までをわかりやすく解説します。
- サイバー攻撃について知りたい人
- 中小企業ができるサイバー攻撃対策について知りたい人
- サイバー攻撃の事例を見たい人
中小企業がサイバー攻撃をうけやすい理由
中小企業がサイバー攻撃の標的になりやすい背景には、いくつか共通した構造的な弱点があります。
攻撃者は「守りが甘い企業」から狙う傾向があるため、中小企業は大企業よりも被害を受ける確率が高いといわれています。
ここでは、その代表的な理由を解説します。
セキュリティ投資が不十分
多くの中小企業は、限られた予算のなかで設備投資や人件費を優先せざるを得ず、セキュリティ対策に割けるコストが十分ではありません。
結果として、古いネットワーク機器のまま運用していたり、ウイルス対策ソフトの更新が止まっているケースも少なくありません。
攻撃者はこうした予算のギャップを把握しており、突破しやすい企業から狙います。
人的リソース不足
専任のセキュリティ担当者を配置できる中小企業は多くありません。
情報システムの管理者が1人だけ、場合によっては他業務と兼任していることもあります。
その結果、インシデント対応が後手に回ったり、異常検知に気づけず被害が拡大するリスクが高まります。
また、従業員向けのセキュリティ教育が十分にできず、フィッシングメールなどの「人」を狙う攻撃に弱い点も大きな課題です。
脆弱性管理の遅れ
OSやソフトウェアの脆弱性パッチ適用が遅れるのも、中小企業に多い特徴です。
アップデート作業に時間が割けない、互換性が不安で更新できないなどの理由で放置されるケースが見られます。
攻撃者は公開された脆弱性情報を常にチェックしており、更新されていないシステムは格好のターゲットとなります。
リモートワークの普及
コロナ以降、VPNやクラウドを活用したリモートワークが広がりましたが、中小企業ではセキュアな環境整備が追いつかず、脆弱なVPN機器や共有パスワードによる運用が続いている例もあります。
これらは攻撃者に侵入口を与える原因となり、ランサムウェア攻撃の足がかりとして悪用されやすくなります。

中小企業に多いサイバー攻撃の種類
中小企業が狙われるサイバー攻撃には、特定のパターンがあります。
攻撃者は「人のミス」「古いシステム」「簡単に突破できる認証」など、中小企業に起こりやすい弱点を突いて侵入してきます。
ランサムウェア
中小企業で最も深刻な被害をもたらしているのがランサムウェア攻撃です。
侵入後にパソコンやサーバー内のデータを暗号化し、「復旧させたければ身代金を支払え」と要求するサイバー犯罪です。
バックアップが適切でない企業ほど復旧に時間がかかり、業務停止や顧客対応の遅れにつながります。
医療機関や製造業など、規模に関わらず幅広い企業が被害に遭っています。
フィッシングメール
従業員をだましてリンクをクリックさせたり、偽のログイン画面へ誘導してパスワードを盗む攻撃です。
中小企業では従業員向け教育やメールフィルターの整備が十分でないことも多く、被害が発生しやすい傾向にあります。
フィッシングを起点に、ランサムウェアの侵入や不正送金につながるケースも少なくありません。
ビジネスメール詐欺
取引先や上司になりすましたメールを送り、偽口座へ振り込みをさせる詐欺手法です。
攻撃者は実際の業務メールを盗み見て内容を精密に模倣するため、気づくのが難しいのが特徴です。
中小企業では「振込プロセスが属人的」「複数人チェックがない」といった運用面の弱点が狙われ、数百万円〜数千万円規模の被害が出る例もあります。
不正アクセス
脆弱なVPN機器、初期設定のままのID・パスワード、古いCMSやサーバーの利用などを突破して侵入する攻撃です。
不正アクセスからネットワーク内部に入り込み、機密情報の窃取やランサムウェア散布など次の攻撃につながることもあります。
特にアップデートの遅れやパスワード管理の甘さが原因になることが多く、「気づいたときには内部情報が抜かれていた」という深刻な事例も増えています。
中小企業のサイバー攻撃の事例
中小企業や地域の医療機関は「大企業ほど対策が進んでいない」という理由から、サイバー攻撃の標的になりやすい傾向があります。
ここでは、実際に報道された代表的な4つの事例を紹介し、何が起き、どのような課題が浮き彫りになったのかを解説します。
大阪急性期・総合医療センター
大阪の大規模医療機関で発生したランサムウェア事件は、全国的に大きく報道されました。
同院はシステム障害をきっかけに調査を進めたところ、外部からの不正アクセスによりサーバー内のデータが暗号化されていることが判明。
業務の一部が停止し、復旧までに約70日以上を要する深刻な事態となりました。
注目すべきは「サプライチェーン経由で侵入された」という点です。
給食業者が使用していたVPN機器の脆弱性を突かれ、そこから医療センター側へ攻撃が波及したとされています。
これは中小企業が踏み台にされる代表例であり、「自社は小さいから関係ない」という考えが通用しないことを示しています。
Yahoo!ニュース:大阪急性期・総合医療センター「サイバー攻撃」によるシステム障害で診療停止
徳島県つるぎ町半田病院
2021年に発生した半田病院のランサムウェア被害は、全国の医療機関が危機感を持つきっかけとなりました。
電子カルテを含む院内システムがすべて暗号化され、病院は通常診療を大きく制限することになりました。
紙カルテに切り替えて診療を継続するなど、現場には大きな混乱が生じました。
中小規模の医療機関ではIT担当者が少なく、バックアップ運用も最適化されていないケースが多いため、復旧に時間とコストがかかる傾向があります。
半田病院の事例もその典型で、システムの復旧や再構築、外部専門家の対応が必要となり、業務への影響は長期化しました。
医療機関に限らず、中小企業が同じ状況に直面した場合にも、業務停止と信用低下という大きなダメージが避けられません。
Yahoo!ニュース:病院にサイバー攻撃、新規患者受け入れ2か月停止…身代金払わず2億円で新システム
岡山県精神科医療センター
岡山県の精神科医療センターでは、2024年にランサムウェアとみられる攻撃により、患者情報を含むデータが外部に流出した可能性があると発表されました。
対象となったのは4万人規模の個人情報(氏名・住所・病名など)で、センシティブな医療情報が含まれていた点が特に問題視されました。
精神科などの専門医療機関は、大企業ほどシステムが堅牢ではなく、中規模病院であっても対策の遅れが生じやすい傾向があります。
今回のケースも、攻撃者にとって「価値の高いデータが存在しながら、セキュリティが手薄」という状況が狙われた可能性が高く、医療機関だけでなく、中小企業全体に「情報資産の価値を正しく理解すること」の重要性を突きつける事例と言えます。
RSK山陽放送:岡山県精神科医療センターにランサムウェアとみられるサイバー攻撃
オリエンタルコンサルタンツ
建設コンサルタント企業であるオリエンタルコンサルタンツのグループ会社が被害を受けたランサムウェア事件では、企業内部のデータが暗号化され、自治体業務に関連する情報にも影響が及んだ可能性が指摘されました。
同社はこのインシデントにより約7.5億円もの特別損失を計上しており、サイバー攻撃が中堅・中小企業にどれほどの経済的打撃を与えるかを示す象徴的な事例といえます。
建設・コンサル系の企業は、多数の自治体・企業の情報を扱う立場にあるため、外部から見れば「攻撃成功時のリターンが大きい」業種の一つです。
こうした企業が狙われた背景には、セキュリティ体制の不均一さや、委託業務を通じたサプライチェーンリスクなど、日本の中小企業が抱える構造的な弱点が浮き彫りになっています。
ITmedia news:ランサムウェア攻撃で7億円超の特別損失
中小企業が取るべきサイバー攻撃対策
中小企業がサイバー攻撃の標的になりやすい理由を踏まえると、限られたリソースでも「最も効果の高い対策」を優先して導入することが重要です。
特にUTM(統合脅威管理)、ウイルス対策ソフト、アクセス権限管理、従業員教育は、攻撃の多くを未然に防ぐための基盤となります。
UTM
UTMは、ファイアウォール・不正侵入検知・URLフィルタリング・ウイルス対策など複数のセキュリティ機能を一台にまとめた機器です。
中小企業では、個別にセキュリティ製品を導入・監視する余裕がないケースが多いため、UTMのように「まとめて守れる」セキュリティ製品が最も効果を発揮します。
外部からの不正アクセスの遮断やランサムウェアの侵入防止、危険なサイトへのアクセス制限など、入口対策として企業の安全性を大きく向上させます。
また、ログ管理やレポート機能も備えているため、攻撃の傾向を把握しやすい点もメリットです。
ウイルス対策ソフト
PCやサーバーに直接攻撃を仕掛けるマルウェアを防ぐため、ウイルス対策ソフトは必須のツールです。
特に近年は「メールに添付された悪意ファイルの開封」や「Web閲覧時のドライブバイダウンロード」など、従業員が気づかないうちに感染するケースが増えています。
最新のウイルス対策ソフトはAIによる振る舞い検知や未知の脅威への防御能力も備えており、ランサムウェア対策としても有効です。
導入後は自動更新を有効化し、常に最新の状態を保つことが重要です。
アクセス権限管理
社内ネットワークにおいて「誰が何にアクセスできるか」を明確にすることは、内部不正や侵入後の被害拡大を防ぐために欠かせません。
特に中小企業では、全員が管理者権限を持っていたり、共有フォルダのアクセス範囲が広すぎるケースが散見されます。
最小権限の原則を徹底し、部署・役割ごとにアクセス範囲を制限することで、万が一アカウント情報が漏えいしても被害を局所化できます。
また、多要素認証(MFA)を組み合わせると、不正ログイン対策の効果が一段と高まります。
従業員教育
サイバー攻撃の多くは、従業員のミスを狙った「人」を標的にする手口です。
フィッシングメールのリンククリックや、不審な添付ファイルの開封だけで重大なインシデントに発展する可能性があります。
定期的なセキュリティ研修、不審メールの見極め方、怪しいファイルを開かない習慣づけ、インシデント発生時の連絡フローの周知など、人的リスクを減らす取り組みが不可欠です。
また、疑わしいメールを共有する文化や、ミスを報告しやすい職場環境づくりも、事故予防に大きく貢献します。
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サイバー攻撃は規模の大小に関係なく、あらゆる企業にとって現実的な脅威です。
特に中小企業は対策が後回しになりがちだからこそ、被害を受けた際の影響は非常に大きく、事業の継続そのものが難しくなるケースもあります。
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