ランサムウェアの原因は?感染したらどうなる?企業の事例と対策方法も

ランサムウェアは企業・個人どちらも被害に遭う深刻なサイバー攻撃です。
本記事では、感染の特徴から主な原因、感染経路ランキング、被害時の対処法、企業が取るべき対策までわかりやすく解説します。
- ランサムウェアの感染の原因を知りたい人
- ランサムウェアのよくある感染経路を知りたい人
- ランサムウェア対策について知りたい人
ランサムウェア感染の特徴
データが暗号化される
ランサムウェアに感染すると、まず最初に起こるのがデータの暗号化です。
パソコンやサーバーに保存されている文書、写真、業務データなどが一斉に暗号化され、通常の方法では開けなくなってしまいます。
多くのランサムウェアは拡張子を変えるため、ファイル名が突然見慣れない文字列になることも特徴です。
さらに最近の攻撃では、バックアップデータまで狙って削除するケースもあり、企業はもちろん、個人のデータも壊滅的な被害を受けます。
身代金を要求される
データを人質に取るように、攻撃者は身代金の支払いを要求してきます。
一般的にはパソコンの画面に「◯日以内にビットコインで支払え」といった脅迫メッセージが表示され、支払わなければデータを永久に失うと警告されます。
しかし、実際には身代金を払ってもデータが復旧しないケースが多く、支払いは非常に危険です。
また、近年は「暗号化」だけでなく、盗み出したデータを公開すると脅す二重恐喝も増えており、企業の信用問題に直結しやすくなっています。
感染に気付きにくい
ランサムウェアは感染に気付きにくい点も大きな脅威です。
多くのマルウェアは侵入と同時に動作するわけではなく、数時間〜数週間もの間、ネットワーク内部で潜伏します。
その間にシステムの偵察やデータの窃取、管理者権限の奪取などを行い、十分な準備が整ってから一斉に暗号化を実行します。
これにより、発見した時には既に手遅れというケースが後を絶ちません。
個人・企業ともにターゲットにされる
ランサムウェアは個人・企業を問わず誰でもターゲットとなり得ます。
企業は業務停止による損害が大きいため狙われやすく、特にセキュリティ対策が十分ではない中小企業が被害の中心です。
一方で、個人ユーザーもフィッシングメールや不正サイトを通じて感染しやすく、写真や個人データがすべて暗号化されるケースが増えています。
IPA・警察庁が毎年警告を出すほど被害が増加している
こうした背景から、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)や警察庁が毎年警告を出すほど被害が急増しています。
特にメール経由の感染やVPN機器の脆弱性を悪用した侵入が多発しており、日本国内でも中小企業を中心に被害が拡大中です。
ランサムウェアは「いつ感染してもおかしくない」状況であり、企業・個人ともに早急な対策が求められています。

ランサムウェア感染経路ランキング
ランサムウェアはさまざまな経路から侵入しますが、警察庁やIPAの調査をもとに見ると、特に被害が多いのが以下の6つのルートです。
それぞれの特徴と、なぜ感染につながりやすいのかを詳しく解説します。
1位:メール
最も多い感染経路が「メール」です。日本国内の統計でも、ランサムウェアの半数以上はメール経由とされており、攻撃者が最初に狙うポイントといえます。
添付されたWord・Excelファイルに仕込まれたマクロが発火するケースや、本文に貼られたURLから不正サイトに誘導されるケースが典型的です。
特に巧妙なのは、実在の企業・取引先を装ったなりすましメールで、差出人名や文面が本物そっくりに作られているため、うっかり開封してしまう人が後を絶ちません。
企業では一人のミスが全社のシステム停止につながるため、最も危険な経路といえます。
2位:VPN・リモートデスクトップ
次に多いのが、VPN装置やリモートデスクトップ(RDP)を狙った侵入です。
特に中小企業では、リモートワークのためにVPNを急ぎ導入したものの、パスワードが弱かったり、古いVPN機器を使い続けていたりするケースが多く、攻撃者が簡単に突破できてしまいます。
また、RDPのポートがインターネットに開放されたままになっている例も多く、攻撃者は自動ツールを使って24時間体制でログインを試みています。
一度侵入されると、攻撃者は管理者権限を奪い、暗号化の準備をした上でシステム全体をロックするため、被害は甚大です。
3位:未更新の機器・OS
OSやソフトウェア、ネットワーク機器を更新しないまま放置すると、既知の脆弱性を悪用されるリスクが一気に高まります。
特に、Windowsの古いバージョンや更新が止まったルーター・NASなどは、攻撃者の格好の標的です。
ランサムウェアの多くは「脆弱性攻撃ツール」をセットで用いており、更新されていない機器は自動的にスキャンされ、攻撃の踏み台にされます。
中小企業では「機器の更新が追いつかない」ことが多く、これが感染リスクの上昇につながっています。
4位:Webサイト閲覧
悪意のあるWebサイトを閲覧しただけでランサムウェアが自動的にダウンロードされる「ドライブバイダウンロード」も、代表的な感染経路です。
この手法はユーザーの操作を必要とせず、サイトを開いただけで攻撃が成立する点が非常に危険です。
さらに近年増えているのが、不正広告を利用した「マルバタイジング」です。
正規のニュースサイトやまとめサイトに、攻撃者が作成した不正広告が紛れ込むことで、普段利用している安全なサイトを閲覧しているつもりでも感染する可能性が生まれます。
5位:外部媒体
USBメモリや外付けHDDなど、外部媒体を経由して感染するケースも少なくありません。
特に、社外の委託先や取引先から受け取ったUSBメモリを、ウイルスチェックせずに接続してしまうことで侵入するパターンが多く見られます。
また、個人の私物PCから社内ネットワークに接続すると、気づかないうちにマルウェアが持ち込まれる危険もあります。
企業全体でUSB利用ルールを徹底していない場合、感染が広がりやすい経路です。
6位:ネットワーク機器
NAS(ネットワークハードディスク)やルーターなどのネットワーク機器は、適切な設定や更新が行われないまま運用されがちです。
特にNASは中小企業でよく利用されていますが、初期パスワードのまま使われていたり、古いファームウェアのまま放置されていたりすることで、攻撃者に乗っ取られやすい状況が生まれます。
一度ネットワーク機器が突破されると、社内のPCやサーバーに次々と侵入され、組織全体が暗号化される危険性があります。

ランサムウェアに感染したらどうする?
ランサムウェアに感染した疑いがある場合、最も重要なのは「初動対応」です。
対応が遅れたり、間違った行動を取ってしまうと、被害が拡大し復旧が困難になります。ここでは、企業・個人どちらにも共通する基本的な対処手順を解説します。
ネットワークを遮断する
感染に気づいたら、まず行うべきはネットワークから切り離すことです。
LANケーブルを抜く、Wi-Fiをオフにするなど、物理的・即時的な遮断が重要です。
ランサムウェアは社内ネットワークを通じて他のPCやサーバーに広がるため、1台の感染が全社的なシステム停止につながる恐れがあります。
遮断が早ければ早いほど、拡散の被害を最小限にできます。
社内で情報を共有する
感染が疑われるPCを見つけたら、情報システム部や責任者へ即時報告し、周囲にも「触らないように」と共有します。
感染端末を再起動したり、暗号化ファイルを開こうとしたりすると、被害が悪化する可能性があります。
また、他の従業員が同じ不審メールを開封してしまう二次被害も起こり得ます。そのため、早期の社内共有は不可欠です。
専門業者に復旧を依頼する
ランサムウェアによって暗号化されたデータは、素人が対処するのはほぼ不可能です。
復旧ツールをインストールする、バックアップを上書きするなど誤った対応をすると、データ復旧の可能性が一気に下がります。
そのため、サイバーセキュリティ専門業者に復旧を依頼することが最善です。
プロであれば感染の種類を特定し、復号可能なタイプかどうかを判断できます。
企業の場合は、原因調査(フォレンジック)や再発防止策の提案も合わせて行われます。
警察庁サイバー相談窓口へ連絡する
ランサムウェアはサイバー犯罪のため、警察庁のサイバー相談窓口に連絡することが推奨されています。
攻撃の手口や被害状況を共有することで、同様の被害を防ぐための重要な情報となり、調査に役立ちます。
企業の場合は情報漏えいの可能性があるため、法令に基づく報告義務が発生することもあります。
個人ユーザーでも相談可能なので、感染時は早めに連絡しておくと安心です。
身代金は払わない
攻撃者は「支払えばデータを復号する」と脅してきますが、支払っても復旧されないケースが非常に多いのが現実です。
そもそも相手は犯罪者のため、約束を守る保証はありません。
また、身代金を支払うことは犯罪組織の資金源となり、別の攻撃を招く原因にもなります。
企業としての信用低下や法的リスクを伴うこともあるため、支払いは絶対に避けるべきです。
企業ができるランサムウェア対策一覧
ランサムウェアは「感染してからの対応」よりも、事前の予防策の方がはるかに効果的です。
特に中小企業では、専任のセキュリティ担当者がいないケースも多いため、日常的な対策をどこまで徹底できるかが被害を左右します。ここでは、企業がすぐに取り組める代表的な対策をまとめます。
パスワード管理
攻撃の多くは、弱いパスワードや使い回しのパスワードから侵入します。
そのため、
- 12桁以上の複雑なパスワード
- 社員ごとの固有パスワード
- 定期的な変更
- MFA(多要素認証)の導入
などを徹底することが重要です。
とくにVPN・クラウド・メールは攻撃者に狙われやすい部分のため、最優先で強化すべきポイントです。
VPNの設定見直し
VPN機器の脆弱性放置は、ランサムウェア感染の大きな原因になっています。
企業が取るべき対策は以下の通りです。
- ファームウェアの定期的な更新
- 不要なポートやアカウントの削除
- パスワードの強化
- 多要素認証の追加
- 古いVPN装置は早めに更新
リモートワークが一般化した今、VPN管理は企業の玄関口を守る重要な対策です。
セキュリティ教育
最も多い感染原因は「メールの誤クリック」です。
技術よりも人が弱点になるため、
- フィッシングメールの見分け方
- 不審な添付ファイルを開かない
- URLを安易にクリックしない
- すぐに報告する習慣
など、社員教育を定期的に行うことが不可欠です。月1回の短い研修でも、事故率を大幅に下げられます。
UTMの導入
UTMは、ファイアウォール・ウイルス対策・不正侵入防御などをまとめて管理できる機器で、企業のネットワーク全体を守るセキュリティの要になります。
中小企業でも導入しやすく、
- 不審な通信の遮断
- マルウェアの検知
- 外部からの攻撃防御
- Webフィルタリング
など多機能のため、ランサムウェア対策として非常に有効です。
ランサムウェア対策ならITDにお任せ

ランサムウェアは「気付いた時には手遅れ」というケースが非常に多く、初動や事前対策が企業の命運を左右します。
しかし、中小企業では専門人材の不足や機器管理の手間から、十分なセキュリティ対策が追いつかないことも少なくありません。
ITDでは、UTM導入・VPNの安全設定・運用サポート・セキュリティ診断・メール対策など、企業規模に合わせた実践的なセキュリティ支援を提供しています。
「どこから手をつければいいかわからない」「すでに攻撃が不安」という場合でも、まずはお気軽にご相談ください。
当社のサービスで、環境に合わせた最適な防御体制を構築いたします。


